バルセロナ・モンセラット

1月3日 バルセロナ市内観光~モンセラット

 スペイン最終日は、バルセロナの市内観光からはじまった。9時にバスを出す予定が、前に駐車した別のバスが邪魔をして10分だけ遅れた。今日は時間を争う市内観光だけあって、わずかな時間のロスでもイライラしてしまう。

■天才建築家ガウディの芸術的建造物に感動

ガウディ  本日の日本人ガイドは、バルセロナ在住の比留間さんという男性だった。ベテランガイドで、いろいろなことをよく承知されており、地元での人脈も豊富なようだった。最近の集中豪雨でダムの水が1年分たまったことや、トレドで25年ぶりの雪が降ったことなどを話し、異常気象を心配していた。スペイン人ガイドが同行し、今日は、カルロスさんという男性だった。

グエニ公園  バルセロナでは、主に、スペインを代表する建築家であるアントニオ・ガウディの作品を見て回ることになっていた。はじめはグエル公園を訪れる。実業家エウセビ・グエルがガウディに依頼した都市開発プロジェクトで、当初は60戸が建設される予定だった。その後、グエルの死去で計画は頓挫し、今は公園だけが残っている。公園は、世界遺産に登録されている。

グエニ公園トカゲ  公園の縁を取り囲むように据えられたベンチは、色とりどりのタイルで飾られていた。座ろうとしたら、まだ朝露にぬれていた。タイルがちりばめられたカメレオンのようなトカゲの噴水の前では、2人で並んだ記念写真を撮ってもらった。
公園をあとにして、観光のメインともなるサグラダ・ファミリア教会にむかった。1882年(明治15年)に着工され、いまでも建設がつづく教会は、バルセロナのシンボル的な存在である。ガウディは、着工の年の翌年から主任建築家に就任し、その後の人生のすべてをこの教会の建設に注いできた。

サグラダ協会1  月曜日から金曜日までが工事中で、この日は日曜日だったので工事は休みだった。日本人の彫刻家、外尾悦郎氏も建設に参加しており、ガイドの比留間さんとは知り合いだそうだ。教会には将来、18本の塔が経つ予定だが、現在は8本しか完成していない。

 教会の正面では記念写真も撮れないので、少し離れたところで塔をバックにして写真を撮ってもらった。近づくほどに教会の圧倒的な存在感がせまってきた。そのユニークさや大きさに驚いたのはもちろんだが、壁面に繊細な彫刻がほどこされていて、どれほどの時間が費やされたのだろうかと感動した。

CIMG1353  しかし、19世紀から作られてきた教会の前面はきわめて優れた美術作品であっても、教会の背面の彫刻などはまだこれからの状態で、教会内部もごく普通のビルの工事現場のように雑然としているだけで、全体的には未完成という印象が残った。塔の上部までエレベーターで上がれるようになっており、比留間さんに案内されてのぼってみると、バルセロナの景色が一望できてすばらしかった。帰りは、らせん階段を一段ずつ降りてきた。

CIMG1350 その後、世界遺産のカザ・バトリョと呼ばれるガウディが晩年に設計した集合住宅を見学した。どれも、常識では考えられない建築物ばかりで、ガウディの才能にはただただ驚くばかりだ。

■スペインの2大聖地、モンセラットで黒いマリアに会う

のみの市  市内観光を終えて、ツアー一行は免税店に連れていかれた。ここでもすぐに店を出て、ちょうど近くの広場で開催されていた骨董市をのぞいた。妻は、真珠が輪になっているブローチを手にとって、骨董屋の店主のおやじとさんざん値段交渉したのだが、結局、おやじは1ユーロもまけなかった。それでも、妻は記念になると言って買い求めたのだった。

モンセラット2  昼食は「TapaTapa」という名のレストランに入り、午後からは自由行動となり、私たちはオプショナルのモンセラットへの半日ツアーに参加することにしていた。モンセラットは、バルセロナの北西約60キロに位置し、標高が1000メートルを超える高地にある観光地だ。

モンセラット  このツアーの参加者はわずか7人だけだったが、大型バスが準備されており、何か申し訳ないような気がした。同行はスペイン人男性の現地ガイドで、学生時代に日本に住んでいたそうで、ユーモアを交えてなかなか流ちょうな日本語を話した。

 モンセラットまでの道すがら、彼はスペインの日常生活をいろいろと話してくれた。たとえば、食事はゆっくりと食べるのがマナーだそうで、1時間以内の食事は「エサ」であり、モノを言わずに食べるのは馬だけだと言い放った。子どもの夏休みは3か月もあって、大人でも1か月の休みが取れるのだそうだ。4割くらいの人が別荘を所有していて、休みは別荘で暮らすそうだ。オレンジジュースは、レストランで飲むと4ユーロはとられるが、市場に行けばオレンジ1キロを1ユーロで売っている。外食は高いので、安いスーパーで買い込んできて家で食事するという。

黒いマリア像  そんな話を聞くうち、モンセラットの山々が見えてきた。モンとはスペイン語で山という意味で、セラットはのこぎりという意味だった。つまり、のこぎりで切られたような山と言うことになる。確かに切り立った奇岩ががそびえている。その姿がガウディの建築物にも影響を受けているという。いわばガウディの原点がモンセラットにあるのだった。

 モンセラットの観光名所は880年に建立された大聖堂で、礼拝堂には、9世紀に山中の洞窟で発見された黒いマリア像が大切に安置されている。
モンセラットには、スペイン全土からたくさんの巡礼者が訪れるので、スペイン国内では、「巡礼の道」として世界的に有名なサンティアゴ・コンポステーラと並ぶ2大聖地なのだそうだ。

黒いマリア像2  しかし、海外からの観光客はバルセロナからモンセラットまで足を伸ばそうとしないらしく、私たちが訪れたときも、大聖堂の中はひっそりとしていた。黒いマリア像は、1メートルほどの小さな像だが、全身が黒檀のように真っ黒になっている。右手に玉を持っており、その玉にさわると幸せが訪れるそうだ。マリアの像まで行ってみると、玉を触るために列ができていた。マリア像は透明なケースに収められているが、玉のところだけ穴が空いていて触れることができた。

■スペインでの最後の晩餐で話がはずむ

ケーブルカー  大聖堂を出ると、何百本ものろうそくがならべられ、赤い炎がゆれていた。山の頂上の方向を見ると、45度ほどの急坂を登山電車がゆっくりと登っていた。降りてくる車両の方は、ほとんど真っ逆さまに落ちてくるように見える。車内にはほとんど人が乗っていない。

 道の脇の屋台には、はちみつや地元産のチーズ、ナッツなどを売っていた。おみやげに500グラムのハチミツとチーズケーキを購入した。チーズケーキは3週間くらいは日持ちするらしい。ずっしり重いハチミツは、機内には持ち込めないので注意するようにと教えられた。

 聖地をめぐるささやかな旅だったが、時間に追い立てられたバルセロナ市内観光とはまったく正反対のゆっくりした時間を過ごすことができた。
夕方の6時にモンセラットから帰ってきて、ホテルに帰る前にデパートに立ち寄り、地下にあるマーケットでおみやげ用のチョコレートを買い求めた。

バルセロナにて  7時半にホテルのロビーに集合し、そこからツアー最後のディナーに出かけていくことになっていた。港近くにあるシーフードレストランでは、魚介類のさまざまな料理が楽しめた。最後の晩餐とあって、1人に1杯ずつのカバ(シャンペン)が振る舞われたが、同席した夫婦の旦那さんのほうがいける口らしく、相談して私と2人で1本20ユーロの白ワインのフルボトルを頼むことにした。カバも白ワインもおいしく、料理にもマッチしていた。夫婦同士で参加し、たぶん年齢もそんなに離れていないようで、ワインがすすむうちに話がはずんだ。

 お二人は、午後の自由時間を使って、サフランのパウダーを買うためにバルセロナの市内をかけずり回っていたという。奥様のほうは、疲れていたうえに昼食でのんだワインが効いたらしく、3時頃にはホテルに帰ってきて、ずっとベッドで横になっていたそうだ。サフランは知人から買ってきてくれて頼まれたものらしいが、そのために、せっかくの自由時間がつぶれてしまったのは残念だっただろう。その話を聞いて、旅行に出るときは、絶対に買い物を引き受けてはいけないとあらためて肝に銘じた。

 ワインのボトルが空っぽになり、もう1本オーダーしたかったところをぐっとこらえて大きな皿に盛られたデザートのプリンを口に入れた。
明日は早朝の5時に起床、7時の飛行機に乗ってヒースロー経由で日本に帰ることになっていた。楽しかった旅の最後に、ほろ酔い気分になってレストランを後にしたのだった。(おわり)

1件のコメント

  1. ガウディの建築物は独特の風情をもっていて、見ていて楽しくなってしまいました。特に印象的なのが、グエル公園のお菓子のような可愛らしい家です。カサ・バトリョも行ってみたかったのですが、私の参加したツアーではバスから眺めるだけでした。モンセラートも行かれたということで、とても充実したスペイン観光が楽しめたのですね!

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